現在、機械が学習したり、人間の行動を認識したりする技術が着々と定着してきています。
その最たるものが「AI」で説明される概念です。
技術の電子化や機械化、AIの発展で、私たちの身の周りの生活は一変しました。
将棋やチェスのプロとAIが対局したり、普段の仕事にもAIの関与が生まれてきていたり。
人間の感情を認識できるロボット「Pepper(ペッパー)」をおいている薬局さんもあったりしますよね。
電子薬歴における機械化技術
こうした機械化された技術が、電子薬歴のシステムにも使われるようになってきました。
例えば、指導文を処方箋内容等から推測しておすすめしてくれるいわゆる「サジェスト」と呼ばれる機能は、薬歴記入のオペレーションを短縮してくれます。
また、服薬指導の参考文例を提案してくれるので、服薬指導文の標準化とレベルアップにも繋がります。
ただ、一方で、自動で文章が作成されるので、何も考えなくても薬歴の記載を行うことが可能になってしまいます。
サジェストは、有効に使えば非常に薬剤師をアシストしてくれるものです。
しかし、使う人の意識によっては、応用スキルの低い薬剤師を量産してしまう危険性もはらんでいます。
電子薬歴でのサジェストとは
「サジェスト」という言葉を直訳すると「提案」です。
様々な視点から、適切な文章を提案してくれる機能がサジェストと呼ばれる機能です。
薬歴でいえば処方内容、過去の指導履歴、患者情報、病名などから自動で文章を作成してくれるものが多いです。
ことに最近では、適当にタッチ入力していくだけで薬歴が完成するものもあります。
薬歴専門メーカーの記入方法
薬歴単体で作っている各メーカーを比べてみると、どのメーカーも「薬歴記入の時間を短縮します」というような謳い文句があります。
それだけ薬剤師にとって、薬歴作成のための時間が課題ということですね。
サジェスト機能に焦点を絞って各メーカーの記入方法を見てみると、下記のように分けられます。
サジェスト機能を持つ電子薬歴
サジェスト機能でない電子薬歴
では、サジェスト機能を持たない薬歴の記入方法はどのようなものかというと、例えば出た処方に対して指導文を選択できる機能があります。
機械が勝手に選んで自動で提案してくるのではなく、処方された薬の指導文例を選ぶことが出来るかたちです。
「薬」というフィルターを通して、指導文を選択させてくれるようなイメージですね。
この入力方法の利点としては、薬剤師自身が指導文をある程度の選択肢の中から選択できることです。
言い換えれば、「こんな副作用もあるんだ」「この指導文は使っていないから指導してみよう」と薬剤師自身の発見や工夫ができる、ということです。
結局どっちがいいの?
結論、どちらの方がいいということはありません。
もちろん、本当に薬剤師の成長だけを考えるなら、一から書いた方が良いですからね。
ですので、サジェスト機能を持つ電子薬歴では、薬歴の画一化を防ぐためにも、「自動で下書きが完成」という位置づけで考えた方がいいかもしれません。
記入方法がサジェスト方式であっても、そうでなくても、どの薬歴でも慣れれば非常にスピーディに薬歴の入力が可能かと思います。
それだけに最近の電子薬歴は進化が進んでいます。
あとは他の機能や、実績、現場の意見、価格などを総合的に考えて判断したいですね。
薬歴記入を効率化の他の方法
サジェスト機能を含め、薬歴記入を効率化する機能としては、音声入力やテンプレート登録機能などが挙げられます。
詳しくは以下のページをご覧ください。
電子薬歴選びは複数の視点から!
電子薬歴は非常に便利なシステムです。
今回は記入方法のところしか触れていませんが、とても薬局業務の役に立ちます。
併用薬や禁忌薬の監査を自動でかけてくれたり、何度も使用する指導文を登録することができたり、忙しい薬局業務を手助けしてくれる機能が満載です。
ただ、その便利さゆえに、薬剤師としての仕事が機械的なものになっては本末転倒です。
実際に薬剤師が転職した際に、「電子薬歴がサジェストしてくれないから薬歴が書けない」という嘆きも耳にします。
またグループ内で使っている薬歴が違う場合、応援やヘルプの際に現地の薬歴が使えないなんて事態も起こりかねません。
電子薬歴の選定の際は、システムを使う側の意識付けも大切になるでしょう。
薬剤師の本文とは何か
機械化された技術やAIが、すべての業務を代わりにできるようになるわけではありません。
人と人とのかかわりが必須の薬局業務には、まだまだ薬剤師の人間としての力が求められます。
業務効率化はもちろんですが、薬剤師の本文とは何か、AI時代を見越して、その辺をしっかりと考えていく必要もありそうです。