零売薬局って?処方箋が無くても薬を販売できる薬局とは

処方箋を持たない患者さまから、「以前の薬と同じものが欲しい」という相談を受けたことはありませんか?
「前回と同じ薬なのに、診療を受けて処方箋をもらって薬局で…」といちいち待ち時間が発生してしまうことに煩わしさを覚える患者さんもいらっしゃいます。

安全面から、ほとんどの場合、ドクターの処方箋なしで薬を販売することは禁止されています。
医薬分業の視点からも、より専門的な知識を持って患者さんの健康・安全を守ることが最も大切ですからね。

しかし、一部の薬に関しては処方箋なしで販売できるものがあり、これらを主に扱う薬局を「零売薬局」といいます。
今回は、「零売薬局」の特徴と現状について、解説します。

零売薬局とは?

零売薬局とは処方箋を持たない患者さんに対して、医薬品販売を行う薬局を指します。
OTC販売や処方箋を基にした調剤とは区別され、病院の薬で言えば約7,300種類の薬が処方箋なしでも販売できます。

使用経験が豊富なものや副作用リスクが少ないものなど、比較的安全性が高いものがこれにあたります。
2005年に制度として認められた新しい薬局です。

零売薬局はどんな人が使っているの?

零売薬局は、仕事の終わりが遅く、医療機関の診療時間に間に合わなかったり、仕事の昼休憩がクリニックの昼休みが重なり受信できない、病院に行く時間が無いという方に特に利用されています。
医療機関に行かずに薬をもらえるという側面からまとまった時間が取れないサラリーマンなどに重宝されているようです。

また、花粉症など、毎年継続的に同じものが欲しいという方には便利と言えます。

零売薬局のメリット

価格が比較的安い

通常の保険調剤では診察代や検査代、調剤薬局の基本料などがかかります。
零売薬局の場合、保険が適用されませんが、医薬品の種類や量によっては安く済む場合があります。
副作用が少ない薬や、少量の場合零売薬局を活用することで患者さんの負担を減らすことができます。

所要時間が短い

病院で診察をしてもらい、そのあと薬の説明を受ける場合、どうしても診察を受けるための待ち時間と薬をもらうための待ち時間が発生してしまいます。
仕事が終わる時間が遅かったり、なかなかまとまって時間を取れなかったりすると、病院にいったり薬局にいったりする時間がない患者さんもいらっしゃいます。

零売薬局なら、欲しい薬がある程度決まっていれば時間を短縮でき、クリニックや病院の時間に関係なく薬局の時間に合わせることができます。
病院にいかず、待ち時間も短縮できれば、新たな病気やウイルスに感染したりするリスクを減らすこともできますね。

医療費の削減につながる

国の公的保険に頼らないので、医療費の削減に繋がります。
調剤報酬の減少など、年々増加する医療費を削減する仕組みや取り組みがなされている現状を見れば、零売薬局は新しい薬局として生き残るための一つのあり方と考えられます。

零売薬局のデメリット

安全性の確保

ドクターの診断を受けていないため、重大な疾患などの見落としが危惧されています。
零売薬局を考える場合、薬剤師の服薬指導や患者さんの状態のチェックをより注意して行う必要があります。

現在、薬やヘルスケアの専門的なことを扱うサイトは、信頼性の問題から軒並み制限されている状況ですが、それでも現代のインターネット上にはエビデンスに乏しい健康療法や情報があふれています。
そういった情報を鵜呑みにして来局する患者さんもいらっしゃるかもしれません。

このような場合、薬剤師として薬学的なアドバイスを通して、患者さんにとってメリットになるサービスの提供が大切になるでしょう。

客単価が安い

零売薬局はまわりの医療機関の処方箋に頼れないので、薬価差益や相談料などで工夫をする必要があります。
しかし、手間がかかる割に利益が少なく、2005年に制度として認められた新しいものであることも影響し、なかなか全国に浸透していないのが現状です。

患者さんも、零売薬局というものがあることを知らないという人も少なくありません。
利益が少ない分、多くの患者さんに足を運んでもらうには、零売薬局という制度があることを広める活動も必要かもしれません。

近隣医療機関との関係

零売薬局は、処方箋を必要としないため近隣医療機関との関係が悪くなる可能性があります。

零売薬局が流行れば、近隣の医療機関で診療を受ける人が少なくなってしまいます。そのため従来の薬局が零売薬局に踏み切ることは現状ハードルが高いと言えるでしょう。
対立関係になってしまえば、クレームやトラブルが起きる可能性は十分に考えられます。

零売薬局の現状

このように患者さんにとっては安く早く薬をもらえるという点でメリットがありますが、薬局側から見れば経営面、近隣医療機関との関係など障害となるものが多いと言えます。
制度化されてからまだ日が浅いということもあり、零売薬局は日本に20店舗もないと言われています。

しかし、零売薬局は、必然的に患者さんとコミュニケーションをしっかりとることになります。
忙しい薬局では「早く薬を出す」ということが重要視されていても、零売薬局では患者さんにヒアリングから、しっかり時間をかけて向き合えるというメリットがあります。

実際、そういった志を持って零売薬局への就職を希望する学生もいます。
零売薬局という立ち位置が、「地域のアドバイザーとして薬剤師のやりがいがあり、患者さんに喜ばれる薬局」として今後更に広まっていくことも考えられます。

生き残る薬局であるために

今回は零売薬局の特徴と現状について解説しました。

まだ日本でも20店舗ほどしかないと言われる新しい薬局体系です。
患者さんの中でも知っている人はまだ数少ないでしょう。

しかし、超高齢化社会の日本では、近年セルフメディケーションの考え方が大きな注目を集めているのも事実です。
今は馴染みのないものかもしれませんが、公的保険に頼らない経営は新しい薬局経営のかたちとして広まっていく可能性もあります。

薬剤師・薬局経営者として、零売という仕組みや特徴は、確実に認識する必要があります。
今後も、零売薬局についての情報に、しっかりとアンテナを張っておきましょう。

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